ベテラントライアスリート S.Uさんのロードバイク、04’キャノンデール IRONMAN(アイアンマン)800です。
シーズンオフ恒例の点検・調整に加えて今回はオーバーホールすることになりました。オーナーの気付いた点として、@ヘッドベアリングから茶色い水が出るAフロントシフトが高速時に不調Bチェーン・スプロケ・ブレーキシュー等の消耗具合のチェック です。
日頃、試合とトレーニングでがんばっているマシン。
今回は久しぶりの点検&オーバーホールです。
オーナーが気にしていた「ヘッドから茶色の水」の部分。
たしかにヘッドパーツから茶色い筋が流れています。
ダウンチューブの裏側は汚れが付きやすい部分です。
地面からの泥水などだけでなく、汗やこぼれたドリンクなどもあって汚れが落ちにくくなっています。
BB後部、ここも汚れやすく掃除しにくい部分です。
シフトケーブルのガイドも汚れていると抵抗が増えてしまいます。
フロントディレイラーの細部にまでもぐりこんだ砂も落としたいところです。
チェーンやスプロケットはオイルに砂やホコリが付着して真っ黒になっています。
そのままでは磨耗を早める原因になります。
ハブやエンドの内側など、チェーン周辺はオイルでけっこう汚れています。
前ギヤ周辺の汚れ。
削れたブレーキシューが付着した汚れです。
実走して現在の状態をチェックします。
その後、メーターやバッグ、ポンプなどを外して洗車します。
作業の支障になるゴミや汚れを落として作業しやすい状態にする為に洗車はとても重要です。
また細部までキレイにすることで見つけにくい故障やヒビなどを発見しやすくなります。
中性洗剤液を使ってスポンジや各種ブラシで汚れを落としていきます。
この後水をかけて汚れと洗剤分を洗い流して乾燥させます。
チェーンと前後のスプロケット。
オイルとそれに吸い寄せられたホコリなどで汚れています。
前ギヤはクランクごと取外して洗い油で洗浄します。
チェーンとリヤスプロケットも同様です。
しつこい汚れの場合はしばらく洗い油に漬け込んでから洗浄します。
各種ブラシを使ってすみずみまで洗います。
「茶色の水」の原因を確認するためにヘッドパーツを開けてみると、やはりベアリングにサビが出ていました。
新車を組み立てるときに一回バラしてグリスを塗ってから再組み付けしているのですが汗や海水の方が強かったようです。
トライアスロンってすごいですね。
フタを開けたところ。
フレームはアルミなので錆びないのですがベアリングレースは鉄製でこれが錆びていました。
上ほどではなかったのですが下側もサビが出ていました。
ベアリングを取り出すためにフロントフォークを抜きます。
上側のベアリングを取外しました。
外側だけでなくシールリング付きのボール本体までサビサビでした。
下側ベアリングにもサビが。
取外したフロントフォークとベアリング。
カートリッジタイプのベアリングを分割するとリテーナーに収まったボールが並んでいます。
フロントフォークを外したフレーム。
これから新しいヘッドベアリングを装着しますが予想以上のサビでフレーム側も少々ダメージを受けています。
ベアリングの装着面が凸凹になっていて本来の位置に収まりません。
そのままセットするだけではまともに動かないのでキレイにしてから組み付けます。
ヘッドベアリング取り付け部(上)。
サビの影響で凸凹になっていた部分を掃除、修正、磨き作業を行いました。
フロントフォーク側もサビや汚れの影響を受けていましたが、新しいベアリングをセットする前にピカピカに磨きました。
新しいベアリングをセットする前に各部にグリスを塗ります。
今回はトライアスロンならではのサビの問題があったので通常よりも多めに塗りました。
フレーム側も同様にタップリ塗っています。
インテグラルヘッド用のカートリッジベアリングです。
よく使われているサイズだけでも3種類の規格があります。
それぞれに角度や厚みが異なり互換性はありません。
水やゴミの進入を防ぐためにゴム製のシールリングが入っています。
しかし今回はそれでも防ぎきれなかったケースです。
ベアリングをフレームにセットしてフォークを取り付けます。
ベアリングとフレームの接触部だけでなく、ベアリングのインナーレースとアウターとの隙間にもグリスをタップリ塗りました。
これなら海水などにもかなり耐えてくれるでしょう。
この後ステムを取り付けますが本調整は前後ホイールを着けてからになります。
クランクの取り付け時にはBBシャフトの嵌め合い部とネジ部にグリスを塗ります。
グリスを塗らない場合よりも少ない力で確実な装着ができます。
少ない力で作業できるということは部品を傷めないことにもつながります。
また水の浸入によりサビて固着してしまうのを防ぐ役割もあります。
クランク側にもグリスを塗ります。
セレーション部とBBの側面に当る部分が重要です。
装着状態を確認しながら規定のトルクでしっかり締め付けます。
ホイールをチェックしています。
タイヤの減り、キズの有無、ハブの状態、フレなどを点検、調整します。
クリーニングが完了したリヤスプロケットとチェーン。
汚れが落ちてスッキリ。きれいになりました。
リヤスプロケット取り付け部分にはグリスを塗ります。
かなり力がかかる部分なのでより良い状態で接触してほしいからです。
サビて外れなくなるのも防いでくれます。
スプロケットをセットします。
ロックリングをセットして規定のトルクで締め付けます。
クイックシャフトにもグリス。
水が入って錆びやすい部分ですが、ここが錆びると車輪が外せなくなる場合もあります。
リヤディレイラーのプーリー、分解状態(洗浄後)。
もともとグリスが入っていますが汚れや水分で劣化して潤滑性能が低下します。
時々は分解して掃除とグリスアップしたいところです。
プーリーだけでなくディレイラー本体もクリーニング&注油したのでピカピカです。
調整済みのリヤホイールを取り付けます。
チェーンはクリーニングの後ビニール袋に入れてしばらくオイル漬けにしておきました。
オイルはワコーズのメンテルブです。
チェーンを通しています。
つなぐ際には方向性が指定されています。
トラブルを避けるために必ず指定の向きで装着します。
シマノのチェーンのピンは切ってつなぐ度にその都度新しい物を使用します。
アンプルタイプのピンを専用工具でセットします。
ブレーキシューが大分擦り減っていたので交換することにしました。
カートリッジタイプのものはストッパーのボルトを外すと簡単に取外しできます。
左は擦り減ったシュー。右が新品です。
違いは明らかです。
手にしているのはMAVICのソフトストーン。リムサイドのクリーナーです。
消しゴムのようにこすって使います。落ちにくい汚れも落とします。
組み上がり後の試乗&微調整も終え、全ての作業が完了しました。
今回ワイヤーの交換はしていませんがクリーニング&注油しています。
全てのネジ類の緩みチェック&増し締めを行っています。
DHバーは調整箇所が多く様々なポジションに対応できます。
何かに当ったのか、突き出し部分の片方がずれていたので修正しました。
ダウンチューブ裏のしつこい汚れも洗車ですっきり。
シートチューブ裏や普段掃除しにくいブレーキ裏、変速機裏も掃除&注油でぴかぴか、快調です。
フロントブレーキ周辺。
ブレーキシューが削れた粉が周辺に付着して落ちにくくなっていましたがキレイになりました。
ブレーキ本体ももちろん細部まで注油してあり軽く操作できます。
前後ホイールも掃除、チェック、調整済みでいいコンディションです。
エンドの内側など掃除しにくい部分もキレイに。
洗油で洗浄したスプロケットやチェーンはピカピカです。
チェーン、チェーンリングもきれいになりました。
見た目だけでなく走りのスムーズさが変わります。
パンタグラフの内側まできれいです。
作業完了後のバイクを作業を始める前と比較してみてください。